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【3分でわかる】インターナルカーボンプライシング(ICP)とは?

 

インターナルカーボンプライシング(ICP)は、気候変動への対応として企業が自ら採用する重要な戦略の一つです。この記事では、ICPの基本的な概念からその働きまで、一通りわかりやすく解説します。

 

【3分でわかる】インターナルカーボンプライシング(ICP)とは?

 

 

 

 

インターナルカーボンプライシング(ICP)とは何か

インターナルカーボンプライシングは、企業が自らの事業活動による二酸化炭素排出量に価格を設定し、そのコストを内部的な意思決定に反映させる手法です。これにより、環境への影響を企業活動に組み込み、持続可能な経済活動に向けた一歩を踏み出すことができます。

 

 

ICPの導入目的

 

## 1. 炭素排出量の把握と削減

 

企業はICPを通じて自社の炭素排出量を把握し、それに対するコストを明確にします。これにより、企業は炭素排出量を削減するための具体的な戦略を立てることが可能になります。例えば、エネルギー効率の高い機器の投資や、再生可能エネルギーの使用を増やすなどの取り組みを行うことで、排出量を削減できます。

 

## 2. 未来の規制への対応

 

世界各地で炭素排出の規制が強化される中、ICPはそのリスクを事前に管理するための有効なツールとなります。企業は自社の炭素価格を設定することで、将来の規制による影響を予測し、その対策を立てることができます。

 

## 3. 持続可能なビジネスモデルへの移行

 

ICPは企業が持続可能なビジネスモデルに移行するための一助となります。炭素排出量にコストを設定することで、環境への影響をビジネスの一部として認識し、それに基づいた戦略を立てることが可能になります。

 

## 4. ブランドイメージと信頼性の向上

 

環境保全に積極的な企業は、消費者や投資家からの評価が高まる傾向にあります。ICPの導入は、企業が環境への責任を認識し、それを積極的に取り組んでいることを示す手段となります。

 

 

 

ICPのメリット

ICPを採用することで、企業は炭素排出を抑制する戦略を立てやすくなります。また、規制リスクの予測や、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。

 

## 1. ビジネス戦略の改善

 

ICPを導入すると、炭素排出に対するコストが明確になります。これにより企業は、より環境に優しい、効率的な運用や投資戦略を策定することができます。例えば、炭素排出量の多い製品やサービスの見直し、環境に優しい技術への投資などが行われやすくなります。

 

## 2. リスク管理

 

炭素排出量に対する規制は、世界中で強化されつつあります。ICPを導入することで、企業は未来の規制によるコスト増やビジネスへの影響を事前に予測し、適切に対策を立てることが可能になります。

 

## 3. 企業価値の向上

 

持続可能な経営を行う企業は、消費者や投資家からの評価が高いです。ICPを導入することで、企業は環境に対する自社の取り組みを具体的に示すことができ、その結果、ブランドイメージの向上や投資家からの信頼性向上につながります。

 

## 4. イノベーションの促進

 

ICPを導入することで、企業は炭素排出を抑える新しい技術や方法を開発・導入するためのインセンティブを得ることができます。これにより、企業はイノベーションを促進し、競争力を維持・強化することが可能になります。

 

ICPのデメリット

 

**1. 価格設定の難しさ**

 

炭素価格の設定は、国や地域、産業、企業の特性により異なります。適切な価格を設定するためには、炭素排出量の計測、経済影響の評価、政策環境の理解など、様々な要素を考慮する必要があります。

 

**2. 統一された基準の不在**

 

ICPはまだ普及途上であり、企業ごとに導入方法や評価基準が異なる場合が多いです。統一された基準やガイドラインの不在は、ICPの効果を評価し、企業間での比較を行うのを難しくしています。

 

**3. コスト負担**

 

ICPの導入と運用にはコストが必要です。炭素排出の計測、炭素価格の設定、新たなビジネスモデルへの移行など、これらの活動は時間と資源を必要とします。

 

**4. 技術的課題**

 

ICPの導入には、炭素排出量の正確な計測と追跡が必要ですが、これは技術的な課題を伴います。特に、供給チェーン全体での炭素排出量を把握することは困難な場合が多いです。

 

 

ICPの実装

 

ICPの実装には様々な方法があります。固定価格制、炭素マーケットへの参加、あるいは企業内のシャドウプライシングなどが考えられます。

 

ICPは、企業の持続可能性を確保するための有力な戦略であり、経済活動全体の炭素排出を抑制するための重要な道具となり得ます。この理解を深め、自社のビジネスモデルにどのように取り入れるかを考えることが、21世紀のビジネスリーダーに求められるスキルの一つです。

 

 

導入事例(マイクロソフトとユニリーバ)

 

具体的な事例として、以下にMicrosoftとUnileverのICPに関する取り組みを紹介します。

 

Microsoft

 

Microsoftは、2021年から企業全体でICPを導入し、その影響をビジネス全般に及ぼすようにしています。その結果、各部門は二酸化炭素排出量を削減するための新しい技術や方法を探すようになりました。これにより、Microsoftは炭素排出量を削減すると共に、そのプロセスで生まれた新しい技術やアイデアをビジネスチャンスとして利用できました。さらに、Microsoftは2030年までにカーボンネガティブ(炭素排出量が吸収量を上回る状態)を達成するという目標を設定しています。

 

MicrosoftのICPの取り組みの一部として、クラウドベースのAIソリューションを提供する新たなビジネスモデルを開発しています。これらのソリューションは、顧客が自身の炭素排出量を効率的に管理し、削減するためのツールとなっています。さらに、Microsoftは炭素排出量を削減するための新たな技術の研究開発にも積極的に取り組んでいます。これらは炭素排出削減という目標達成だけでなく、新たなビジネスチャンスともなっています。

 

 

Unilever

 

Unileverは、ICPを自社の投資決定に組み込むことで、持続可能なプロジェクトへの投資を促進しています。具体的には、各プロジェクトの炭素コストを評価し、それを投資決定の一部として考慮します。これによりUnileverは、より環境に優しいプロジェクトを優先的に選ぶようになり、全体としての炭素排出量を削減できました。また、Unileverも2039年までにカーボンポジティブ(炭素排出量が吸収量以下の状態)を達成するという目標を掲げています。

 

Unileverは、ICPの導入を通じて、持続可能な原料の調達や製品開発に力を入れるようになりました。例えば、パームオイルや紙などの原料調達においては、森林破壊を引き起こさないサプライヤーを選ぶなど、持続可能な供給チェーンの確立に取り組んでいます。また、環境負荷の低い製品の開発や、包装のリサイクル可能性の向上など、環境に配慮した製品開発も行っています。これらの取り組みは、環境に配慮する消費者からの支持を得て、新たなビジネスチャンスとなっています。

 

メモ

Q;「パームオイルや紙などの原料調達においては、森林破壊を引き起こさないサプライヤーを選ぶ」とあるが、どのようなサプライヤーを選ぶようになるのだろうか?

A:持続可能なサプライヤーとは、環境や社会に対する影響を最小限に抑えながら製品やサービスを提供する企業のことを指します。以下に、パームオイルや紙などの原料調達においてUnileverなどの企業がどのようなサプライヤーを選ぶかについて説明します。

 

**1. 認証制度の活用**

森林破壊を引き起こさないサプライヤー選びにおいて、各種の認証制度が役立ちます。例えば、パームオイルの調達においては、持続可能性を評価するためのRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)認証を有するサプライヤーを選ぶことが一般的です。

 

**2. トレーサビリティ**

サプライヤーが製品の原料をどこから調達しているかを追跡することで、そのサプライヤーが持続可能な方法で製品を生産しているかを確認することができます。特に、森林破壊を引き起こす可能性のあるパームオイルや木材製品などの調達においては、このトレーサビリティは非常に重要です。

 

**3. 直接のパートナーシップ**

企業は、自身の持続可能な調達目標に合致するサプライヤーと直接パートナーシップを結び、共に環境や社会への影響を最小限に抑える生産方法を追求することもあります。

 

これらの方法を通じて、企業は森林破壊を引き起こさないサプライヤーを選ぶことができます。

 

まとめ

これらの例から、ICPの導入は企業が新たなビジネスチャンスを見つけるためのキャタリストとなり得ることがわかります。持続可能なビジネスモデルの探求は、企業が競争力を保つために重要な要素となっています。

 

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