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【詳細解説】企業の最適資本構成とは?論文に基づく解説

 

みなさん、こんにちは、本記事では、企業の最適資本構成についてわかりやすく詳細を解説したいと思います。

最適資本構成はファイナンス理論を語るうえで、土台となる理論となります。

なぜなら、資金の調達から企業活動は始まり、調達された資金を資産に投資し、お金を稼いでいくからです。

 

サステナビリティの観点からは、最適資本構成に基づく資金の調達が出発点となり、そこから脱炭素投資を含めたサステナブル投資が可能となります。

特に、サステナビリティ投資は、効果が長期で、足元において多額の投資が必要となるものもあり、資金調達を考えることは極めて重要となります。

 

【詳細解説】企業の最適資本構成とは?論文に基づく解説

 

最適資本構成とは何か?

 

企業の資本構成は、資金調達の方法を示すものです。この資金調達は、自己資本(株主からの出資)と他人資本(借入金等)の二つに大別されます。企業にとって最適な資本構成とは、自己資本と他人資本のバランスを最も適切に保つことで、コストを最小化し、企業価値を最大化する状態を指します。

バランスシートの右側(負債)の議論となります。

 

自己資本と他人資本の違い

 

自己資本は、株主からの出資や再投資された利益などから構成され、企業が独自にコントロールできます。一方、他人資本は、銀行からの借入金などを含み、返済義務や利息負担が伴います。これらの違いから、最適な資本構成を見つけることは企業経営における重要な課題となります。

 

最適資本構成の求め方

 

最適資本構成を求めるには、資本コストを最小化する比率を見つけることが基本となります。これは、自己資本と他人資本のそれぞれのコストを考慮した上で、全体のコストが最小となる資本構成を求めるものです。

 

最適資本構成の重要性

 

最適資本構成は、企業がリスクとリターンを適切にバランスさせ、企業価値を最大化するために必要な要素です。この理解は、20代の社会人が企業の経営理念や戦略を深く理解するための一歩となります。

 

最適資本構成に関する有名な論文

 

"Trade-Off Theory of Capital Structure"(資本構成のトレードオフ理論)について詳しく論じたModiglianiとMillerの論文は、企業の最適資本構成についての研究の中心となっています。

 

ModiglianiとMillerの主張は、「企業価値不変の原則」です。これは、完全市場においては、企業の資本構成はその企業価値に影響を与えないというものです。しかし、現実の市場では税制、破産コスト、情報の非対称性などの要素が存在するため、この原則は必ずしも成り立たないことが指摘されています。この観点から最適資本構成を求めるための研究が数多く行われています。

 

特に、MyersとMajlufによる"Pecking Order Theory"(ピーキングオーダー理論)は有名です。彼らは企業が資金調達を行う際に、内部調達、無担保債、有担保債、株式という順番(ピーキングオーダー)で行うと述べ、資本構成が情報の非対称性によって影響を受けると指摘しました。これらの理論は、企業の最適資本構成を理解するうえで重要な参考になります。

 

"Trade-Off Theory of Capital Structure"(資本構成のトレードオフ理論)は、企業の資本構成が、利益とコストのバランス、つまり「トレードオフ」に基づいて最適化されるとする理論です。

この理論によれば、企業は自己資本と他人資本のバランスをとることで資本コストを最小化しようとします。一方で、借り入れを増やすことで発生する追加的な利息コストや破産リスクといったコストも考慮に入れます。このように、リスクとリターンのバランスをとることで、最適な資本構成を求めるというのがこの理論の基本的な考え方です。

具体的には、借入金を多くすると(他人資本を増やすと)、税制上のメリットがある一方で、破産リスクが高まります。

税制上のメリットとは、借入金の利息は法人税の計算上、損金に含めることができ、節税効果があります。

このため、そのメリットとデメリットが釣り合う、つまりトレードオフとなる点が最適な資本構成となります。

 

この理論は、企業が資本構成を決定する際の一つの指標となります。ただし、実際の企業の資本構成は、業界の状況、企業の規模、経済状況など、多くの要素に影響されるため、必ずしも理論通りにはいかないということも理解しておく必要があります。

さらに、企業は将来のビジネス計画や投資機会、マクロ経済の状況などを考慮した上で、最適な資本構成を見直すことが求められます。具体的には、成長期の企業は新しいビジネスチャンスを活用するために資本を必要とするため、他人資本(借入金)を増やす可能性があります。一方、安定した収益を上げている企業は、自己資本を増やすことで、その安定性を保つことを選択するかもしれません。

 

また、経済状況や金利環境の変化も、企業の最適な資本構成に影響を与えます。たとえば、低金利環境では借り入れが有利になり、借入による他人資本の割合を増やす企業が多く見られます。

 

最適資本構成は、企業の財務戦略の中心的な部分であり、経営者や投資家が企業価値を評価する際に重要な要素となります。トレードオフ理論を理解することで、企業の資本政策や投資判断の背景を理解する一助となるでしょう。

 

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