本記事では、ROICツリーにおける重要ドライバーの設定方法について詳細は解説したいと思います。
筆者は、公認会計士であり、ROICの改善を含む企業価値向上についてのコンサルティング業務を生業としています。
まず、基本的なところは、こちらの記事をご覧ください。
本記事では、ROICツリーの作成プロセスの中でのSTEP4とSTEP5の設定方法についての深堀です。
ROICツリー作成方法
STEP1 ROICの計算式を定義する
STEP2 ROICをB/SやP/Lに紐付く構成要素に分解する
STEP3 各構成要素を改善するための指標(ドライバー)を設ける
STEP4 各構成要素の内、重要なものは何かを検討する ←ココ!
STEP5 具体的な目標設定をする ←ココ!
【詳細解説】ROICツリー作成方法:重要ドライバー設定編
以下が重要ドライバー設定のための具体的なSTEPとなります。
1自社の経営サイクルにおけるKPI・管理指標について整理する(以下、KPI)
2管理指標とSTEP3で識別されたドライバーを紐付ける(以下、ドライバー)
3ドライバーについて、過去7年から10年を並べて過去の推移を定量化する
4ドライバーについて、定性的な管理可能性を検討する
5重要なドライバーは何かを定量的・定性的に検討する。
最も大切なこと
ROICへのインパクト
この重要ドライバーにおいて最も大切なことは、自分たちで改善活動が可能で(コントロール可能性)、その改善結果がROICの改善につながること(ROICへのインパクト)を考慮することです。
現場負荷への考慮
そして、最初の内は、改善活動を行う現場の負荷が唐突に増えるものではなく、過去のKPIと同一、もしくは延長線上のものとして設定し、現場の抵抗を抑えることもポイントとなります。
1自社の経営サイクルにおけるKPI・管理指標について整理する(以下、KPI)
この図のココ!
自社の経営サイクルにおけるKPI・管理指標について整理します。
そうすることで、自社がどのような活動を行っているのかを客観的に把握します。
月次モニタリングKPI、経営会議の中で重点的に議論されているKPIなどのことです。
また、現場が独自で設定しているKPIの情報などもあれば必要に応じて収集すると、現場負荷への考慮という点で、のちのプロセスにおいて役立ってきます。
21つめで識別されたKPIとSTEP3で識別されたドライバーを紐付ける(以下、ドライバー)
この図のココ!
KPIとドライバーを紐付けます。
こうすることで、そのKPIが一体、ROICのどこの改善につながっているかを可視化することができます。
この段階でも気づきはあるはずで、KPIにて管理されているドライバーがあることや、ROICツリーの内、PL面はカバーされているが、BS面はKPI設定されていないことなどが課題として挙がることもあります。
3ドライバーについて、過去7年から10年を並べて過去の推移を定量化する
ドライバーの過年度数値を並べます。
そうすることで、過去の数値の変遷(良化、悪化)が可視化されます。
いつまでさかのぼって設定するかという期間は、製品ライフサイクルを考慮しながら考慮することも一案ですが、10年くらい並べていたら文句なしです。
4ドライバーについて、定性的な管理可能性を検討する
ドライバーを並べたら、定性的に、どのドライバーを動かせるか、ということを検討します。
ドライバーによっては、自社努力のみでは動かすことができない項目も見つかるはずです。
多くの場合は、対外的な交渉の困難性を伴うような性質のドライバーがそれにあたります。
例えば、CCCの改善を例にとると、売掛金の回収サイト、買掛金の支払サイトについては、対外交渉が伴い、パワーバランスによっては改善が困難なドライバーもみつかるはずです。
5重要なドライバーは何かを定量的・定性的に検討する。
1から4つ目までのSTEPを経たうえで、最終的な重要ドライバーを設定します。
ポイントとしては以下の4つを充足する必要があります。
- 定量化が可能
- ROIC改善につながる
- コントロールが可能
- 現場の理解が得られる
まとめ
いかがでしたでしょうか。ROICツリーの作成への一助となれば幸いです。