最近、サスティナブルという言葉をよく耳にすると思います。
個人や企業が行うサスティナブルな取り組み、というものもありますが、国や都市をあげて、サスティナブルな国、サスティナブルな都市をつくっていくという流れが世界各地で起きています。
いまや、サスティナブルな都市の代表格となっているのが、世界最大の都市であるニューヨークであることをご存じでしたでしょうか。
ニューヨーク市(以下、New York City = NYC)が、サスティナブルシティに生まれ変わるべく、2050年までの長期プランをもって、行動しています。
「OneNYC2050」というプロジェクト名で、NYCは一丸となって進んでいます。
プロジェクトの概要については、以下の記事をご覧ください。
【サスティナブルシティの事例】2050年までのニューヨークの10の施策
本記事では、そのプロジェクトの中でも、地球温暖化対策に関する政策について深堀し、わかりやすく解説しようと思います。
【サスティナブルシティの事例】地球温暖化対策へ本気のニューヨーク
僕は、公認会計士として、ニューヨークへ赴任しており、今は、地球温暖化対策のため活動をしております。
2050年までの目標達成に向け、本気で取り組むNYCを肌で感じております。
出典:OneNYC-2050-Full-Report-1.3.pdf (netdna-ssl.com)
地球温暖化対策のための2050年までのニューヨークの目標
NYCは、2050年までの地球温暖化対策のために以下の具体的な目標を掲げています。
特に、1つ目と2つ目が、最も重要、かつ、難易度が高い目標となっていますが、非常にクリアな目標です。
ニューヨークの目標
- 2050年までに炭素排出量を実質ゼロにする
- 2050年までにクリーンエネルギー使用率を100%とする
- ハリケーンなどの洪水への保険を増加させる
- 年金基金の投資先に、地球温暖化対策をしている企業への投資を増やす
都市ですが、国家のような目標を掲げているわけですね。
背景
NYCが取り組みを開始した背景の1つは、2012年に、ニューヨークを襲ったハリケーン「サンディ」の影響があります。
サンディにより、44人がなくなり、ニューヨーク市は、190億ドル(約1兆9000億円)の被害を受けました。
そして、ハリケーンは、年々増加していくことが予想されています。
もちろん、ニューヨークの被害だけでなく、カリフォルニアの森林火災、日本の台風被害、プエルトリコの洪水など、世界各地で影響がでていることが、ニューヨークが本気で、取り組んでいることの背景にあります。
現状
NYCは、2007年ごろから、気候変動に対して取り組みを開始しています。
現状、以下の実績を残しています。
- 2017年に、炭素排出量を2005年比較で30%削減
- 5,000以上の建屋のエネルギー効率を改善するために投資
- 1,750以上の電気自動車を導入
- 550以上の電気自動車チャージを導入
- 500の古いトラックを、新しいクリーンなモデルのトラックに変更する補助の実施
- 自転車のネットワークを拡大し、244マイル(約400キロ)の自転車レーンを設置
- ソーラーパネル設置の補助金による25%のソーラーパネルコスト削減
- ソーラーパネルの50,000世帯以上のニーズに対する設置拡大
ちょっと一言
自転車のネットワークの拡大、についてですが、街を歩いていると、City Bikeと書かれたレンタルサイクルがいたるところで目につきます。
これは、乗り捨ての自転車のイメージで、手軽に借りることができます。
僕や僕の同僚も使っています。
日本ではあまり見かけませんが、NYCは、以外と狭い街に、超密集しているので、自転車移動の方がエコで、便利なんでしょうね。
東京は、起伏もあったり、NYCよりは全然広いので、素直に模倣することはできないかもしれませんが、真似したい点かもしれません。
ニューヨーク市民の声
NYCの14,000人以上にアンケートをとった結果、以下の声があがったようです。
市民の環境問題への高さが垣間見えますね。
- NYCを環境対策都市として、グローバルリーダーとしたい
- 再生可能エネルギーを使用した都市としてリーダーとなりたい
- 沿岸を守るためや洪水被害を抑えるためのインフラ整備を拡大してほしい
- 空室改善、水質改善を進めてほしい
- 炭素排出量の減少のため、炭素価格導入など、クリーン都市としていきたい
地球温暖化対策のためには、炭素排出量の削減、というのが1つのキーワードです。
詳細は、以下の記事もご参考ください。
【まとめ】脱炭素社会について2つの数値で簡単に解説:510億トン→ゼロ!
今後の具体的なアクション
NYCは、全体としてのエネルギー改善、建物のエネルギー効率・炭素排出量の改善、交通機関のエネルギー効率・炭素排出量の改善の3つの観点から具体的なアクションを掲げています。
- 全体としてのエネルギー改善
- 建物のエネルギー効率・炭素排出量の改善
- 交通機関のエネルギー効率・炭素排出量の改善
全体としてのエネルギー改善
再生可能エネルギーの確保
2050年までに100%再生可能エネルギーを導入するという目標達成のため、再生可能エネルギーが供給される体制を整備する必要があります。
2030年に、50%達成という中期目標も設定しています。
再生可能エネルギーは、具体的には、ソーラー発電、洋上・陸上の風力発電、水力発電を指します。
エネルギーのソースは、もちろん、NYCの外から求める必要もあります。
1つのプランは、ニューヨーク州とNYCが協力し、大規模なカナダの水力発電を利用する、というものです。
2025年までに500メガワットの蓄電設備の確保
2025年までに500メガワットの蓄電設備を確保するという目標です。
ソーラーや風力発電は、季節的変動、気候による変動で、発電量がかわってしまうため、安定供給の観点から課題があります。
それを補うのが、蓄電設備です。
例えば、日照時間が長い夏場において太陽光発電で発電量を増やし、蓄電し、冬場に使用する、ということができれば、安定供給という課題をクリアできます。
ですが、蓄電設備の技術というのは、まだまだ発展途上というのが現状です。
建屋へのソーラーの設置
NYCは、建屋のオーナーに、ソーラーパネルの設置を促しています。
そうすることで、建屋内の電気は、自分のクリーンな発電で賄うことができるというものです。
ソーラーの設置については、2012年から2018年までに、約9倍のキャパシティとなっています。
建物のエネルギー効率・炭素排出量の改善
下記の図の通り、NYCの炭素排出量の66%は建物からが占めています。
次が、自動車などの交通機関で30%を占めています。
なので、カーボンニュートラルのためには、建物からの炭素排出量を減らす必要があります。
特に、全面ガラス張りのビルは、エネルギー効率が非常に悪いというデータがあり、ガラス張りのビルに対しては、エネルギー効率の改善を求めていくようです。
建物のエネルギー効率改善・脱炭素のために、以下のような施策を進めていきます。
- 2030年までに新建屋には炭素排出量ネットゼロシステムの導入の義務化
- 水や資源の無駄遣い削減によるエネルギー効率化
- 建屋エネルギー効率化のためのアシスタントの増加
- 建屋エネルギー効率化のための、資金の貸付
交通機関のエネルギー効率・炭素排出量の改善
先ほどの図において、炭素排出量の3割を占める交通機関のエネルギー効率改善、炭素排出量削減のための施策です。
そのために、2050年までに、自動車に依存した移動手段を減らし、自転車や徒歩の促進、また、クリーンエネルギーを使用したバスや自動車の普及を推進していきます。
他にも以下の施策が掲げられています。
- Con Edison社との提携によるEVチャージ施設の増設
- 公共交通機関のクリーンエナジー化の推進
- トラックなどの商業車について、クリーンエナジー化のための補助金導入
- ごみ収集の専用ゾーン設置によるごみ削減・ごみ収集の効率化
ちなみにこちらの本は、これからの時代のサステナビリティとは?ということを歴史の延長線上・過去のデータで見た時の未来を予測したものとなっており、非常におもしろくおすすめです。
例えば、人口が減少する、ということをポジティブにとらえており、それをデータをもって示しています。そして、加速しているものの1つが「地球温暖化」ということを論じ、深堀していきます。
まとめ
NYCの本気さ、感じでいただけたでしょうか。
世界最大の都市は、2050年という節目に向けて、本気で動いています。
日本もこの流れに乗って、追い越してほしいところです。
そのために、日本のみなさんの意識がかわっていく必要があります。
この記事を読んで、少しでも環境問題について考えてもらい、行動に移してもらえればと思います。
サスティナブルな価値観については、以下の記事もご参考ください。
ビルゲイツの本に学ぶサステナブルな暮らしの本質的価値観と実践方法6選