最近、ESG投資という言葉をお聞きすることも多いかと思います。
個人投資家の方、副業として投資を始めた方、また、経営者の方など、ESG投資について関心が高くなってきていると思います。
「ESG投資とは?」
「これからESG投資を始めたいけど、よくわからない」
「ESG投資の具体的な選定方法は?」
「ESG投資のメリットはあるの?デメリットは?」
関心はあるものの、まだまだ認知度は低く、情報も少ないと思いますので、このような疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。
僕は、公認会計士としてESGに関することを専門分野の1つとして活動をしております。
本記事では、ESG投資の基本的な理解から、メリットやリスクを含め、簡単に、わかりやすくまとめたいと思います。
【まとめ】ESG投資とは?メリットやデメリットについて簡単に解説
ESG投資とは
ESG投資とは、従来の利益や資産などの財務情報だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。
個人投資家よりも、規模が大きな資金を運用する機関投資家(年金資産の運用、投資会社など)を中心として、注目されてきています。
これは、企業経営のサステイナビリティ・持続可能性を評価するという概念が普及したこと、気候変動などを念頭に置いた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たなビジネスモデル創出を評価するベンチマークとして、広まってきています。
(出典:経済産業省 ESG投資(METI/経済産業省))
ESG投資の市場規模
出典:Global Sustainable Investment Review 2020 GSIR-20201.pdf (gsi-alliance.org)
市場規模は、どんどん伸びていっています。 2020年は、世界で35兆3,010億ドルの投資がされており、2016年から比較すると、1.5倍の成長を見せています。
日本は、2020年に2兆8,740億ドルであり、2016年から比較すると6倍の成長をしています。
ESG投資の5つの手法
ESG投資の手法は、大きく5つあります。
それぞれ特徴があり、価値観(Values)を重視しているものから、金額的価値・収益性(Value)も重視するもの、に分かれていきます。
価値観をより重視するものから順番に説明します。
インパクト投資
最も価値観を重視した投資手法です。 環境や社会的価値を重視し、その投資目的が尊重されます。
収益性としては、市場平均レベルから、市場平均レベルを下回ることもあります。
例えば、グリーンボンドや再生可能エネルギーインフラへの投資、などがあげられます。
ネガティブスクリーン投資
これも価値観を重視した投資です。 自社の投資ポートフォリオから、特定の企業やセクター向けの投資を除外する投資手法です。
例えば、たばこ産業や、軍需産業向けの投資をポートフォリオから除外する、といったものです。
テーマスクリーン投資
特定のサステイナブルに関するテーマを設定し、そのテーマに沿った投資先を選定する投資手法です。
例えば、クリーンエナジーに関する投資先を選定する、といったものです。
ポジティブスクリーン投資
特定の、ESGに関して積極的な企業や、特定のサステナブルに関する活動を行っている企業、格付け機関からのESGスコアが一定数以上のもののみを投資先として選定する投資手法です。
テーマスクリーン投資と似ていますが、より特定の企業を選択する点で、異なっています。
例えば、ESGに関する格付けが一定以上のもののみをポートフォリオに組み込むなどです。
>ESGインテグレーション
ESG投資の中では、最も収益性を重視する投資手法で、ESGに関する開示されている情報を利用し、既存の財務情報を補正・修正し、投資先を決定するものです。
既存の利益や資産の情報を、ESGに関する情報で補正・修正する、という点において、インテグレーション(統合)という名前がついています。
つまり、ESGに関する評価が高いことによって、企業価値がより高い、もしくは、将来高くなるであろう投資先を選ぶものです。
例えば、ESGインデックスといったインデックス投資もESGインテグレーションのカテゴリーに入るとされています。
ESG投資のメリット
価値観を重視した投資
環境への影響、社会的影響、など、価値観を重視した投資であることは間違いないため、ただ金銭的価値を目的とした投資に、プラスアルファの意味が付加されます。
なので、投資を通じた社会的貢献がより実践されます。
長期的収益
ESGを重視した投資であることは、長期的な目線で見た場合、より収益があがる可能性があります。
特に、環境対応は、近年の世界的な政府ポリシーの流れとなっています。
既存のビジネスモデルが、環境負荷が高い場合、将来、政府の規制により、収益性が下がっていく可能性がありますが、一方で、環境にやさしいビジネスモデルを創出した場合、政府の後押しもあり、より収益があがっていく可能性があります。
なので、リスクとチャンスを考慮された投資手法となり、長期的により収益が上がる可能性があります。
例えば、自動車産業においては、ガソリン車の新車販売が2035年以降禁止されたとすれば、それは既存ビジネスへのリスクですし、電気自動車の普及というチャンスとなります。
ESG投資のデメリット
短期利益を得られない可能性がある
短期的に見た場合は、必ずしも収益性が高くなるとは限りません。
先ほどの、自動車産業の例であれば、直近、2,3年においては、電気自動車の販売が、進むかというと、クエッションがつくこともあるかと思います。
また、収益性を重視せず、投資の価値観を重視する投資手法であるインパクト投資の場合、必ずしも収益性が高いものではなく、収益性は市場平均以下という可能性もあります。
ESGに関する情報が少ない
ESGに関して開示されている情報が少ない点は、リスクとなります。
現状、まだ、情報開示のフレームワークが整備・発展されている段階であり、投資する際に考慮すべき情報が、すべての企業から比較可能な形で、開示されているわけではありません。
例えば、炭素排出量の情報が開示されているかされていないか、という点、そして、炭素排出量の開示が、企業全体としての排出量か、製品1つあたりの排出量か、など、開示尺度が統一されていない、などの問題点がありえます。
ESGに関する情報の信頼性が不透明
情報が開示されていたとしても、それが信頼できるものなのか、という点も、保証されていません。
財務情報の場合、開示情報の公認会計士による外部機関の監査が必須とされているものもあります。
一方で、ESGに関する情報の監査・信頼性の保証については、まだまだフレームワークが整っていません。
実際、外部機関により信頼性が保証されているものは、開示情報の3割程度で、さらにその開示情報の全体ではなく、一部分のみが保証されている、と最近の調査で明らかにされています。
例えば、開示情報のうち、炭素排出量のみが監査されている、などです。
一方で、3分の2以上の投資家は、すべてのESG情報について監査されるべきといった調査結果もあり、情報の信頼性確保については、関心が高いテーマとなっています。
ESG投資企業の格付け基準が評価機関によって異なる
ESGに基づいた格付けを、格付け機関を行っています。
これは、投資家が、ESG投資をするにあたり、統一の尺度をもって、企業間比較が可能となることがメリットです。
しかし、現状、格付け機関ごとに、評価基準が異なっており、統一の評価基準がありません。
なので、格付け機関によって、ESGの格付けが異なるという事象が生じうることになります。
そうすると、投資家は、企業間比較が困難となり、適切なESG評価に基づいた投資ができないリスクがあります。
これは、先ほどの情報開示が限定的ということも関連しており、情報開示が限定的であるがゆえに、格付け機関が、独自の尺度を使用する、という現象が生じております。
まとめ
ESG投資についての概要、メリット、リスクについて理解いただけましたでしょうか。
今後、ESG投資が増え、企業がよりESGを重視し、そして、特に、Environmentが改善されていけばよいと思います。