ESG経営

【まとめ】非財務情報とは?ニーズの背景とESG経営の関係を詳細解説

「非財務情報」、もしくは、「サステナビリティ開示」という言葉を最近よく聞くようになりました。

 

「非財務情報ってなに?」

「非財務情報が、なぜ今求められだしたの?」

「非財務情報を経営に活かすには?」

「非財務情報の信頼性は?」

 

あいまいな言葉が故に、たくさんの疑問がわく方も多いかもしれません。

 

本記事では、非財務情報とはなにか、また、今求めらている背景、そして非財務情報とESG経営の関係についてまとめています。

さらに、今後の課題として、非財務情報の信頼性、ということにも触れようと思います。

 

【まとめ】非財務情報とは?ニーズの背景とESG経営の関係を詳細解説

 

 

 

僕は、公認会計士として、10年間、会計監査のプロフェッショナルとして仕事をしており、今は、サステナブルな社会実現のために活動をしています。

2021年よりニューヨークに赴任しており、アメリカでの非財務情報に関する動きということも肌で感じております。

 

 

非財務情報とはなにか?

非財務情報とは、従来から存在する、財務情報以外の情報を指します。

財務情報とは、主には、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書のことを指します。

これらは、企業の資産の情報であったり、利益やお金の動きを数値としてあらわしたもので、過去の企業活動の結果としての利益と、ある時点の企業の持ち物(資産やキャッシュ残高)を表したものです。

 

では、その財務情報以外の非財務情報とは、「将来予測に資する情報」を指します。

最近求められ始めたのではなく、1990年代からその議論はあります。

例えば、経営者の計画、企業のリスクと機会、長期的価値を形成する基礎的な情報、などが合あげられます。

 

そして、それらの情報が、今、より広く、具体的に求められてきています。

具体的に何かというと、主には以下のような項目が代表として挙げられます。

 

  • 経営者の経営理念・経営方針
  • 経営者の財務情報への解釈
  • コーポレートガバナンスに関する情報
  • 地球環境への影響に関する情報

 

経営者の経営理念・経営方針

経営者の経営理念や経営方針で、企業の根幹をつかさどる部分です。

 

経営者の財務情報への解釈

1年間の利益や資産の動きの結果の分析、事業の状況の分析などです。

 

コーポレートガバナンスに関する情報

会社組織の状況、取締役会や監査役会の体制など、企業の組織運営に関することです。

 

地球環境への影響に関する情報

ここが、新しく、ホットな点です。

例えば、温室効果ガス排出量、エネルギー効率、環境規制への対応状況など、環境をターゲットとした開示です。

 

違う見方をすると、「ESG」と呼ばれる、最近注目を浴びている環境(Environment)、社会( Social)、ガバナンス(Governance)の観点での情報開示が求められている、ということができます。

ESGについてはこちらの記事をご参考ください。

【まとめ】ESG経営とは?最新の2つの背景から簡単に解説!

 

 

非財務情報が今求められている背景

非財務情報が今求められているのは、投資家が、非財務情報を求めているから、という理由で、マーケット起点での需要が高まっていることが理由です。

では、なぜ、投資家は求めているか、というと、従来の財務情報では、企業価値へ合理的な説明がつかず、財務情報以外の非財務情報も合わせて、投資先を意思決定する必要がでてきているからです。

 

それは、企業価値と、従来の財務情報を比較し分析するとその背景が見えてきます。

 

出典:Ocean Tomo, Annual Study of Intangible Asset Market Value 2020を図示

 

このように、2020年においては、従来の財務情報では、企業価値の10%しか説明がついておらず、残りの90%は、財務情報以外のところから価値が存在しているという見方ができます。

そして、その無形資産90%の価値の源泉が、非財務情報の中に存在する、という分析ができ、非財務情報を理解しなければ、企業の価値が理解できない、という状況が生じております。

 

このような背景から、非財務情報は今、求められているわけです。

 

非財務情報が求められている背景については、こちらの記事もご参考ください。

【解説】FSA Credential で勉強できる3つのこと。日本で唯一の詳細解説

 

 

非財務情報とESG経営の関係

先ほどの価値の分析の通り、非財務情報が、企業価値の9割を占めている可能性があることがわかります。

逆に、経営者としては、非財務情報を有効に活用・分析し、企業価値を高めていく、という見方ができます。

今後、非財務情報を経営に役立てることが、ESG経営として成功していくための秘訣となります。

 

では、なぜ非財務情報がESG経営と結びつくかというと、ビジネスをするうえでの、長期的観点からのリスクとチャンスをつかむことができるからです。

 

例えば、TESLAという自動車メーカーは、みなさんご存じかと思います。

自動車販売台数が右肩あがりであることはありますが、トヨタと比べると世界販売台数は、トヨタのほうが格段に大きいです。

 

しかし、企業価値は、TESLAがトヨタを抜いて大きくなっています。

財務諸表の純資産価値も、当然トヨタのほうが大きいです。

これは、まさに、TESLAが、電気自動車というサステイナビリティ付加価値の高い製品でブランドを確立し、今後、伸びるであろうという投資家の期待の表れであり、まさに、ESG経営の結果、企業価値が向上しているといえます。

 

電気自動車、という分野は、チャンスとしてとらえることができます。

経営者としては、電気自動車に社会がかわっていくというところから、それ周辺の変化があり、そこにチャンスを見出すことだできますが、例えば、2035年以降に新車販売は電気自動車のみとなる、など、長期的な経営目線となります。

 

一方で、リスクはというと、ガソリン車に関連するビジネスということとなります。

いずれ、ガソリン車はなくなる可能性があります。

信じがたいことかもしれませんが、世界はその流れで動いています。

 

例えば、2050年に向けて、サスティナブルシティを目指しているニューヨークは、電気自動車の街にするべく、動いています。

詳細は、こちらの記事をご参考ください。

【サスティナブルシティの事例】地球温暖化対策へ本気のニューヨーク

 

なので、今、当たり前のものが、ESG経営目線で考えると、古いものとなり、時代の流れをつかみ、リスクとチャンスを把握できる、というわけです。

そして、そのESG経営のための基礎となる情報が、非財務情報というわけです。

 

非財務情報の信頼性とその監査

非財務情報に関しては、現状、開示のフレームワークが発展途上の状況であるため、企業は、必ずしも統一的な開示ができているわけではないです。

そして、情報には、常に、「情報の信頼性」という論点があります。

 

財務情報については、公認会計士の監査が義務付けられているなど、情報の信頼性を確保する体制が整っています。

 

しかし、非財務情報は、まだ、情報の信頼性を確保する体制が整っていません。

なぜなら、開示フレームワークする定まっていないからです。

 

ですが、先ほど述べた通り、非財務情報のニーズが高まっているということは、情報の信頼性の確立も急務の課題となります。

したがって、今後、監査を受ける必要性が生じるなど、体制が整備される流れが必然となると思います。

 

2019年のS&P500のレポートでは、90%の企業が、ESGに関する情報を開示しているが、そのうち29%だけが監査を受けており、その29%というのも、開示項目のうちの、例えば温室効果ガス排出量のみ、など、一部の項目のみ監査を受けているということのようです(G&A Institute, 2020 S&P 500 Flash Report)。

 

実際、Mackinsey Sustainability Reporting Surveyによれば、67%の投資家は、ESGに関する情報について、監査が必須、ということを求めている、とのことです。

まさに、情報の信頼性へのニーズの高さがうかがい知れます。

 

まとめ

非財務情報を把握することが、今後の、投資家、経営者、両方の目線から重要ということがいえると思います。

こちらの本はサステナビリティについてこれから学ぶ方に非常におすすめの本となっています。
<電子書籍>


ESG投資の成り立ち、実践と未来【電子書籍】[ 伊藤隆敏 ]

<紙>

ESG投資の成り立ち、実践と未来 [ 本田桂子 ]

 


CFOポリシー〈第3版〉 財務・非財務戦略による価値創造 [ 柳 良平 ]

 

また、サステナビリティに関する資格にFSA Credentialというものがあります。

非財務情報の体系や、今回記載した背景などを学ぶものです。

こちらの記事も合わせてご覧ください。

【解説】FSA Credentialとは? 勉強方法や勉強時間は?

 

 

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