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【解説】ESG経営におけるSASB基準の活用~2つのMetric

 

SASB基準とは何か、その具体的な中身であるMetric(指標)について解説し、ESG経営におけるSASB基準の利用方法について解説します。

 

この記事におススメの方

  • SASB基準とは?
  • SASB基準の具体的な中身を知りたい、勉強したい
  • SASB基準におけるMetricについて理解を深めたい
  • ESG経営とSASB基準の関係を知りたい
  • ESG経営におけるKPIやベンチマークはどのようなものがあるのか

 

 

【解説】ESG経営におけるSASB基準の活用 -2つのMetric

 

目次

 

僕は、公認会計士として職業についている会計プロフェッショナルです。

今後、会計の世界において非財務情報の開示が重要となってきます。

非財務情報の開示についての開示基準がSASB基準なのですが、SASB基準の理解、それに伴うESG経営の理解は非常に重要です。

ESG経営を考えるうえでSASB基準の存在を認知していることは有用だと思い、記事をまとめました。

 

なお、非財務情報の開示については、こちらの記事をご参考ください。

【まとめ】非財務情報とは?ニーズの背景とESG経営の関係を詳細解説

 

 

SASB基準とは

 

SASBとは、Sasutainability Accounting Standards Boardの略称で、サステイナビリティに関する会計基準・開示基準をまとめている団体です。

SASBが定めた会計・開示基準が、SASB Standsrdsと呼ばれています。

 

IFRSやUS-GAAPという会計基準をお聞きしたことがあると思いますが、この2つは国際的に認められた会計基準となります。

その、サステイナビリティに関する会計基準バージョンが、SASB Standardsです。

 

 

SASB基準にける2つのMetric

 

SASB基準の中で、重要な概念がMetricというものです。

従来の財務諸表においては、売上、利益、固定資産、負債、など、企業の経営成績や財政状態を数値としてとらえる指標が存在します。

その指標によって、投資家は、企業のパフォーマンスが理解でき、企業間の比較が可能となります。

 

Metricは、サステナビリティの観点から、企業のパフォーマンスを理解し、企業間の比較が可能をするために定められた指標となります。

つまり、従来の財務諸表における、売上、利益、固定資産、負債などに該当する項目のサステナビリティ会計バージョンが、Metricというわけです。

 

2つのMetrics

 

SASB基準には、2つのMetricが存在します。

 

  1. Accounting metric
  2. Activity metric

 

それぞれ具体的に解説していきます。

 

1.Accounting metric

 

Accouting metricとは、サステナビリティに関するトピックについて、企業のパフォーマンスを測るための指標です。

つまり、企業がそれぞれのサステナビリティトピックに対して、どれだけの能力を発揮しているかを理解するための指標です。

 

そして、Accounting metricは、2つに分類されます。

 

  • Quantitative metric
  • Discussion and Analysis metric

 

 

この分類の大きな違いは、1つ目のQuantitative metricは、定量的な指標であること、Discussion and Analysis metricは、定性的な指標であることです。

 

  • Quantitative metric → 定量的
  • Discussion and Analysis metric → 定性的

 

 

Quantitative metric

 

定量的な指標であるため、開示することが非常に有用な情報となります。

後ほど解説しますが、投資家ではなく企業側の立場にたったときに、ESG経営を考えるうえでの、KPIやベンチマークとして検討することが有用となります。

 

例えば、GHG排出量、リコールされた製品数、建築業界における第3者機関から認定されたプロジェクト数、などです。

 

 

Discussion and Analysis metric

 

Discussion and Analysis metricは、定性的な情報であり、企業の将来のパフォーマンスを理解するために有用な情報となります。

 

Discussion and Analysis metricにより、定性的な情報を開示することにより、企業の戦略を理解し、現在のパフォーマンスが、将来の目標を考えたときに、どのような意味を持つのか、という、企業を長期的な文脈で理解するための重要な情報となります。

 

 

 

2.Activity metric

 

Activity metricは、Accounting metricとは異なり、定量的なものしかありません。

Accounting metricと一体となって使用されるのですが、企業間比較を可能とするため、企業のビジネス規模を定量的に示すために使われる指標です。

 

例えば、出版数、従業員数、年間生産量、工場の稼働率などです。

 

 

ちなみに、Accounting metricもActivity metricも、従来の財務諸表の中で開示されている項目は、SASB基準上は、該当しません。

SASB基準は、あくまで、財務諸表で開示されている項目以外の非財務情報の開示を目的としており、重複はありません。

 

 

SASB基準のESG経営への活用

 

先ほど解説したSASB基準が定めるMetricは、ESG経営を考えるうえで、企業のKPIやベンチマークとして活用が可能となります。

 

なぜなら、SASB基準の設定目的に、Financially materialというものがあるからです。

サステナビリティの観点から、Metricが定められているのですが、それらのMetricは、B/SやP/Lに対するインパクトが大きいもののみが採用されています。

詳細はこちらをどうぞ。

【解説】FSA CredenialとSASB Standardsの関連性について、3つの目的を踏まえて解説

 

つまり、SASBが定めるMetricは、財務諸表へのインパクトがある項目、つまり、企業価値に影響がある項目、といえます。

ESG経営の目的は、長期的な観点から企業価値を最大化することであるため、企業価値に影響があるMetricをKPIやベンチマークとすることが有用、ということです。

 

 

今後のESG経営を考えるうえで、どのようなKPIやベンチマークを採用するか、ということは非常に重要といえます。

なぜなら、企業は、そのベンチマークに向かって努力する目標となるからです。

SASB基準の理解は、まさに、その目標をどう定めるか、ということに対して有用となります。

 

 

最後に

 

SASB基準は、開示の基準ですが、なぜ企業情報の開示が必要か、というと、企業価値を理解するうえで重要な情報だから、開示が必要となります。

逆に、企業価値が理解できる情報をKPIやベンチマークとして活用すれば、企業価値が向上し、かつ、投資家との対話も深まる、ということとなります。

 

SASB基準について、体系的に理解ができるFSA Credentialという資格があります。

こちらの記事も合わせてご参考ください。

【解説】FSA Credentialとは? 勉強方法や勉強時間は?

 

 

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