ROICとWACCの違いの結論としては以下のように整理することがわかりやすいと思います。
- ROIC=収益
- WACC=費用
それぞれの算定式は以下のとおりです。
- ROIC=税引後の営業利益÷(有利子負債+株主資本)
- WACC=株主資本コスト×投下資本に対する株主資本の割合+税引後の負債コスト×投下資本に対する有利子負債の割合
順番にわかりやすく説明していきます!
【3分でわかる】ROICとWACCの違いとは?企業価値最大化のための指標
ROIC=収益とは?
「ROICが収益」というのは、ROICが投下資本に対してどれだけの「実績」リターンを獲得したのか、を表す指標であることを指します。
分子には、税引後の営業利益(実績)がきています。営業利益は実績ベースであり、理論値ではなくファクトデータです。
分母は、投下資本がきており、これはどれだけ資本を投入したか、ということを表します。
まとめると、ROICは投入された資本に対して、一体、いくら稼いだか、という実績を表す指標となります。
この観点から「収益」という表し方ができます。
ROICは「資本収益性」と一般的に呼ばれます。
WACC=費用とは?
WACCが意味するところは、出資している側から見たときには、出資者が期待している報酬を指します。
これを企業側から見ると、出資者に対して支払わなければならない予想コスト=費用と捉えることができます。
株主資本コストと負債コストの2つを、株主資本と有利子負債の出資割合で加重平均したものです。
- 株主コストは、株主が求めている報酬・期待リターン
- 負債コストは、債権者が求めている利息
株主コストの方は、理論値により算出されるため、正しい回答はないですが、例えば配当性向というのがその実績の1つです。
負債コストの方は、明確に利率としてわかりますよね。
両者ともに共通しているのは、企業側から見たときに、「出資を集めるためにかかっているコスト」といえます。
配当は株主に対するコストだし、利息は債権者に対するコストです。
まとめると、「コスト=費用」ということとなります。
ROICスプレッドとは?
では、収益(ROIC)と費用(WACC)がでてきました。
とりあえず、引いて、「利益」を出したくなりますよね。
- ROIC-WACC=収益―費用=利益
- 利益=ROICスプレッド と呼ぶ
このROIC-WACCで表される利益のことをROICスプレッドと呼びます。
スプレッドとは、上乗せされたもののイメージです。プレミアムに近いです。
理論的には、このROICスプレッドが、企業価値の源泉といわれます。
なぜなら、集めたお金である出資金が生んだ収益から、出資者に対して支払う費用を引いた残りがROICスプレッドであるためです。
なので、企業価値を高める、というのはROICスプレッドを極大化していく、ということと同義となります。
東証からも求められている資本収益を意識したB/S経営というのは、このROICスプレッドを経営に役立てて最大化を目指してほしい、ということとなります。
こちらの記事に詳しくまとめています。
東証提言のまとめ:企業価値向上とその施策 資本コスト経営について
いかがでしたでしょうか。
ROICとWACCの違いを本質的な部分から解説し、そこから企業価値とは?というところまで解説しました。
みなさまの一助となれば幸いです。