カーボンニュートラル達成のために、ESG経営、サスティナブル経営が求められる時代の流れにおいて、CFOの役割がますます重要となっています。
CFOは、従来、その名の通り、Finance(会計・財務)において重要な役割を担ってきていましたが、その求められてる役割は拡充してきています。特にカーボンニュートラル達成という社会課題の解決のために、CFOはとりわけ重要な役割を担っています。
この記事では、拡充されたCFOの役割について、6つの観点から解説しています。
この記事におススメの方
- カーボンニュートラルを目標としている
- カーボンニュートラル達成に向けたCFOの役割を理解したい
- ESG経営、サスティナブル経営をいかに取り込むかを考えている
- 将来、CFOを目指している
- 時代が求めている経営方法を理解したい
なお、カーボンニュートラルについては、こちらの記事もご参考ください。
【まとめ】カーボンニュートラルとは?原因と個人ができる取り組みを解説
【解説】カーボンニュートラル達成のための拡充された6つのCFOの役割
僕は、公認会計士として会計プロフェッショナルとしての仕事に従事しています。2021年からニューヨーク赴任をしており、地球温暖化解決のため活動をしています。
企業のCEO、CFOの方との対話において、カーボンニュートラル達成、ESG経営、サスティナブル経営は、ホットなトピックであり、その経験から、CFOの役割として重要なことは何か、何が拡充されているのか、ということについて解説しようと思います。
6つの役割とは、以下のもので、それぞれ解説していきます。
なお、目線としては、2050年までに達成、など、10年単位の長期的ビジョンとしての役割なため、取り組むことはできたとしても、すぐに役割をまっとうできるものではないです。
あくまで長期的な企業価値向上のために必要なアクションとご理解ください。
1 現状の炭素排出量の把握
まずはカーボンニュートラル達成のため現状の把握です。
炭素の総排出量を把握し、そのうえで、内訳をいろんな切り口で把握する必要があります。
例えば、オフィス、工場、製品、売上あたり、グローバルでみた地域、移動、人ごと、などの分析視点が考えられます。
炭素排出の出どころを理解することにより、ゼロにする方法は変わってきます。
2 カーボンニュートラル達成に向けた実現可能、かつ、利益も確保する事業計画の策定
カーボンニュートラル達成に向けた実現可能、かつ、利益も確保する事業計画の策定を、時間軸も意識して検討する必要があります。
重要なこととして、今まで、例えば2050年までにカーボンニュートラル達成、というその場しのぎの目標を掲げ、計画の詳細は後日、といっていた企業があるのであれば、その「後日」とは、まさしく「今」です。
「今」、検討する必要があります。
ポイントは3つです。
- 時間軸
- 従来の事業計画に組み込むこと
- 企業価値の向上のためであること
時間軸
冒頭でも述べたように、カーボンニュートラルの達成は、多くの場合、1年や2年で達成できません。
10年単位の長期的な時間軸をもって考える必要があります。
例えば、工場のエネルギーを化石燃料から天然ガスに変更する、というプランを立案し、炭素排出量が半分になった、としても、それだけでは、目標を達成できていません。
カーボンニュートラルを達成することが目標であって、その過程において、天然ガスへの移行、というのがあればよいですが、目先の削減だけを考える計画は、計画達成への道筋とは呼べません。
例えば、2050年にカーボンニュートラルを達成するのであれば、2050年までの5年単位などでのそれぞれのポイント、2025年、2030年、2040年、2045年において、どう企業があるべきか、ということを真剣に考える必要があります。
従来の事業計画に組み込むこと
2つポイントがあります。
- 主たるビジネスに組み込むこと
- デジタル化と似ている
1番のポイントは、カーボンニュートラルの達成のための行動を、現在の企業の主要な活動に組み込むということです。
つまり、カーボンニュートラル達成と企業の利益追求をバラバラに考えるのでなく、今ある企業の主たるビジネスを含めたすべての行動に、カーボンニュートラル達成ということを組み込む必要があります。
ある意味、デジタル化と似ている側面があります。
デジタル化も、デジタル化によって、ビジネスを加速させる、効率化させる、というメリットを求めていましよね。それと同様で、カーボンニュートラルを達成することにより、ビジネスを加速させ、効率化させる、という考え方に変える必要があります。
正直、従来は、環境対応は、ビジネスの1レベル下の端っこの論点だったという意識を持っている方もいるかもしれませんが、今は、違います。
コアとなるビジネスに組み込む必要があります。
企業価値の向上のためであること
もともとのCFOの役割であった企業価値の向上のための会計的側面からの企業理解に、カーボンニュートラルを組み合わせる必要があります。
つまり、カーボンニュートラルを達成することにより、達成する過程により、企業価値が、向上するような計画を立案することです。
カーボンニュートラルの達成のためだけを意識して計画したのであれば、コストが大きくかかり、結果として企業価値が毀損する可能性があります。
長期的に見た際のリスクと、ビジネスチャンスを捉え、計画する必要があります。
なお、参考として、リスクとビジネスチャンスの捉え方としてのESG経営については、こちらの記事もご参考ください。
3 ガバナンスの構築
カーボンニュートラル達成のための企業活動について、しっかりとガバナンスを整理する必要があります。
- 取締役会の役割の整理
- 関係部署とのコミュニケーション
取締役会の役割の整理
例えば、取締役会において以下のことを検討する必要がでてきます。
- 計画の設定プロセスへの関与
- 計画の承認
- 脱炭素の行動のためのリスクマネジメント(重要な法規制の把握など)
関係部署とのコミュニケーション
ここも重要ですが、カーボンニュートラル達成には、多くの関係部署とのコミュニケーション・理解を得ることが必要となる、企業の横の連携が非常に重要となります。
そのために、CFOが旗振り役となり、しっかりと関係部署とコミュニケーションをし、プロジェクトを進める必要があります。
サステナビリティに関連する部署だけが検討するのではなく、ビジネスに組み込む必要がありので、関係部署との連携が必要となります。
なので、これはトップダウンで動くのが最も効率的なのではないかと思います。
関係部署のトップが理解していない状況では、いくらサステナビリティに関連する部署が働きかけたとしても、組織は動けません。
また、法務部門との連携も必要で、ガバナンスの一環として、関係する法規制の変化の動向も重要です。
非財務情報に関する開示面の対応も、昨今動きが速いので、動向把握は重要です。
なお、非財務情報については以下の記事もご参考ください。
【まとめ】非財務情報とは?ニーズの背景とESG経営の関係を詳細解説
4 気候変動に関するコストの把握
計画立案のところにももちろん関連しますが、気候変動に関するコスト・リスクの把握です。
例えば、過去にない規模の台風が起きたらどうなるか、気温が上昇したらどうなるか、海面が上昇したらどうなるか、というマクロな視点でのシナリオ分析をすれば、コスト・リスクの把握と、それに対応するアクションプランの立案が可能となります。
5 人材の確保
サステナビリティに関する人材の確保も重要となります。
専門的な知識が必要となってくるため、優秀な人材の確保・育成が必要です。
例えば、炭素排出量の把握、炭素削減計画のための専門的知識、非財務情報の開示のための専門家、気候変動に関する専門家、あるいは、炭素排出をトラックするためのシステムに関する専門家、など、あらゆる側面で専門的知識が求めらます。
6 投資家とのコミュニケーション
企業の、カーボンニュートラル達成に向けたストーリーを投資家とコミュニケーションをする必要があります。
今後、投資家はますますカーボンニュートラルを意識した投資活動を行う流れがあります。
CFOが、自ら、しっかりと投資家と対話し、何がニーズなのか、企業はストーリーを持っているか・語っているか、という役割を担っていく必要があります。
この辺りの背景はこちらの記事もご参考ください。
【まとめ】非財務情報とは?ニーズの背景とESG経営の関係を詳細解説
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